公的金融機関の活用

国金(こくきん)から資金調達したい

通称、国金(こくきん)、皆さんご存知でしょうか。創業間もない方はよくご存知だと思いますが、二代目社長にはご存じない方も多いのではないでしょうか。

国金(こくきん)から資金調達したい国金(こくきん)とは、全額政府出資の日本政策金融公庫の中の国民生活事業のことです。日本政策金融公庫は、2008年10月に国民生活金融公庫、中小企業金融公庫他が合併して誕生しました。

合併はしたものの、
旧)国民生活金融公庫 → 国民生活事業(通称、国金)
旧)中小企業金融公庫 → 中小企業事業
となり、事業としては従来通り、別々に融資事業を行っています。

国金は、創業支援に力を入れており、比較的小規模な事業者に対して少額の融資を行っており、普通貸付限度額は4,800万円、平均融資額は700万円程度です。
一方、中小企業事業は、その上のランクの企業をターゲットとしており、普通貸付資限度額は10倍の4.8億円、平均融資額は9,000万円程度です。

国金の平均融資額700万円程度??少なすぎる、と、心配しないで下さい。あくまでも平均ですので、会社の業種、事業規模によっては、運転資金貸付で4,800万円(経営革新計画の認定を受けた場合などには特別貸付で7,200万円などの制度がある)までの資金調達まで可能です。

それでは、公的金融機関である国金は民間金融機関と違ってどんな特徴があるのでしょうか。

国金の特徴

1. 金利は利用する融資制度により一律に決まり、しかも固定金利
民間金融機関の金利(利息)は、企業の格付けによって決まるため、格付けの悪い企業は、高い金利を支払う必要があります。また、信用保証協会の保証料についても、2006年10月以降、リスク考慮型保証料率を採用したため、CRD協会の評点によって9段階の保証料率が適用されることになりました。評点の悪い企業は、高い保証料を支払う必要があります。
それに対して、国金は融資制度によってどんな財務内容の企業でも、融資可能な企業であれば一律でしかも固定の金利が適用されます。言い換えれば、格付けがあまり良くない企業にとっては、民間金融機関よりも安い金利での資金調達が可能となります。

2. 保証料が一切不要(保証協会付融資はない)
国金には、保証協会付の融資制度はありません。実は、全国にある信用保証協会は万が一の貸倒れに備えて、日本政策金融公庫に保険を掛けています。その関係で、保険を引き受けている日本政策金融公庫が保証協会付融資を行うことはありません。
ですから、金利負担以外には一切の保証料や手数料が不要である国金は、実際の資金調達コストがかなり安くなります。 

3. 無担保、無保証人での融資可能
国金では、代表者の連帯保証以外を不要とする制度があります。そのため、担保とする不動産や第三者保証人がいない場合でも、国金なら資金調達が可能です。

4. 政府の政策に基づく特別貸付制度がある
公的金融機関である国金では、政府の政策に基づく特別貸付制度があります。それらの制度を利用することで、超低金利でしかも超長期(10年以上)の資金調達か可能です。

5. 他行からの借換えOK
保証協会付の融資については、旧債振替(きゅうさいふりかえ)が禁止されています。旧債振替とは、民間金融機関のプロパー融資を民間金融機関が自行の債権の保全のために保証協会付融資に借換える行為です。
しかし、公的金融機関である国金では、経営環境が悪化した企業を救済するため、他の民間金融機関からの借換えや保証協会付融資の借換えに応じることができます。そのため、保証協会の保証可能枠(与信枠)を温存するために、保証協会付融資の借換えを国金で行うことができます。

6. 融資限度額が少ない
国金は、普通貸付限度額として、運転資金4,800万円までです。
ただし、制度によっては、普通貸付限度額とは別枠で資金調達が可能となる制度があります。例えば、東日本大震災復興特別貸付制度では、普通貸付限度額4,800万円とは別枠で4,800万円までの資金調達が可能となり合計で9,600万円までの資金が、会社の財務内容によっては調達可能です。

7. 融資担当者がつかない
国金での融資は、分業が進んでいます。具体的に言うと、融資申し込みを受付ける担当者、融資の可否を判断する審査担当者、融資を実行する担当者という具合に、それぞれ別の担当者が行います。また、格付けによって金利が変わることがないため、要件にさえ当てはまりかつ融資が可能な企業であれば、事務的に融資が実行されます。そのため、民間金融機関のようにひも付きの融資担当者はいません。 

8. 創業(開業)時には3分の1自己資金が必要
信用保証協会では、自己資金がまったく無くても、1,000万円の創業資金については、保証協会付融資を受けることができます。しかし、国金の場合には、自己資金が最低3分の1ないと、創業融資を受けることができません。

9. 不動産担保設定の登録免許税(0.4%)が不要(非課税)
不動産担保で融資を受ける場合、民間金融機関では、根抵当権設定額の0.4%、1億円の根抵当権設定で40万円の登録免許税が必要になります。それが、日本政策金融公庫では一切、不要です。

国金活用事例

皆さん、どうですか。国金は、公的金融機関であり、ずいぶん民間金融機関と違う特徴があることが分かりましたでしょうか。それでは、そんな特徴を持っている国金をどう活用したらいいのか、具体的な活用事例を紹介しましょう。

1. 月々の返済が重い会社が、国民生活事業の融資制度を利用して、長期(5年以上)の運転資金に借換え


国金では、通常の運転資金でも5年返済が可能です。さらに、特別貸付制度を利用すれば、7年以上の超長期の運転資金の調達も可能です。
返済期間の短い借入金を、それらの5年以上の長期資金で借り換えることで、月々返済を軽くすることができます。

2. 保証協会付融資を国民生活事業の融資制度に借換え


保証協会付き融資を、保証料がいらない国金の融資制度に借り換えることで、トータルの資金調達コストの削減と、いざというときにいつでも使える信用保証協会の保証可能枠(与信枠)の温存を図ります。  

3. 経営革新計画の認定を受けて特別貸付制度を利用


新しい事業にチャレンジするために経営革新計画の認定を受けて、特別貸付制度である新事業活動促進資金を利用することで、通常貸付に比べて超低金利で、しかも普通貸付限度額よりも多い7,200万円(うち運転資金は4,800万円)までの資金調達が可能となります。

4. 融資残高シェアの調整に国民生活事業を利用


民間金融機関の融資担当者は、他行の融資残高シェアを常に気にしています。メイン銀行であれば、他行の融資残高が自行の融資残高を上回っていないか、保証協会付融資に偏りがないか、他行の融資姿勢が消極的でないか、など、いつも融資残高シェアを気にしているものです。

そこで、国金を利用して融資残高シェアの調整をすることを検討してはどうでしょうか。例えば、メイン銀行の融資残高を準メイン銀行が上回ってしまった場合などには、国金を利用して準メインの融資の借換えを実行して、メイン銀行の融資残高シェアを上げてやるなどです。